第3章-「人の役に立ちたい」と介護の仕事に復帰するも
通院しながら服薬治療を続けると、少しずつ体調が回復。「そろそろ社会復帰を」と選んだのは、それまでとはまったく畑が違う介護職だった。
「祖母が認知症になり、介護の知識があれば役に立つかもしれないと思いついたのがひとつのきっかけでした」
働きながら受講することで授業料が免除になる制度を利用し、介護ヘルパー2級(介護職員初任者研修)の資格を取得。病気については伏せたまま、認知症対応型のグループホームで働き始めた。
仲間のまとめ役を率先して引き受けたり、食品工場時代にもアルバイトの学生たちと親しく交流したりと、もともと人とふれあったり人のために動くことは嫌いではなかった。だから収入は充分とはいえなかったが、介護の仕事は性に合っていたそうだ。
「利用者さんのお世話をしながら話を聞くのが楽しかったですね。いろいろな人生があることを学び、自分の考え方も少し柔軟になったような気がします」
ところが、ある事情でしばらく服薬を休止せざるを得なくなり、めまい、頭痛、吐き気といった深刻な離脱症状で再び仕事を続けることが困難に。その際、自治体のケースワーカーに取得をすすめられたのが「精神障害者保健福祉手帳」だった。