第6章-うつ病を抱えながら働き続ける9つのヒント(8/9)

ヒント8 仕事の成果は足し算で測ろう

「うつ病」を伴う働き方で評価に関するヒントです。

「うつ病」になりやすい人の特徴の一つに「100点指向」があるのではないかと思います。これは、まず「~すべき到達点(成果、評価)」があり、これに対してどれだけ失点を抑えたかという点で、自分自身を評価する傾向があるのではないかと思うところです。
一般に「~すべき思考」などといったりしますが、まず到達点を強く意識します。これは決して悪いことはありません。目標をしっかり設定できるというのは、特にビジネスの世界においては必須のスキルであることと思います。しかし、その到達点は「必ず達成すべき・・」などと考えがちのところ、つまりマイナスを無くすことが評価の軸になっているのではないでしょうか。
「うつ病」を抱えながら仕事を続けていくと、心身共にままならないことや不甲斐無いことなどが多くあります。そのような状況で、このマイナスの評価軸で成果を測ると、自分を評価したり、褒めたりすることができなくなってしまいます。このような場合、すぐに自己嫌悪になってしまいます。
「うつ病」には波のある病気であることは再三お話をしてきました。このマイナスの評価軸は、この波に飲み込まれやすい特徴があります。たいてい到達点を設定するのは、調子が良い時ですし、調子の良い状態が続くことを無意識のうちに前提としてしまうからです。そうすると大抵の場合、調子が悪くなることによって到達点に未達の状態になるのですから、落ち込みます。

周囲からはこのような気持ちの内面はなかなか理解してもらえないようです。なぜそのような小さな事を気にするのか、なぜそこまで落ち込むのかが、なかなか伝わらないものです。
自己評価の仕方は、今までの環境要因も大きく影響をあたえますが、なかなか大人になってから変えることが難しいものであると思います。しかし、到達点を意識して、つい減点思考で評価してしまうところを、その到達点に向けてどれだけ積み上げられたかを、意識してみて変えていく必要があると思います。これは、自分の目標に近づけた点を素直に加点として、評価しようというものです。
ときには積み上げが全然できていなかったり、ちょっとした失敗が積み上げたものを台無しにしてしまうこともあるでしょう。このような時は、誰でも落ち込むものです。私が提案するのは、落ち込まないことではなく、考え方が減点法であるがために、十分評価できるような内容であっても、自己評価が低く落ち込んでしまうことを見直したいと考えるからです。


「~すべき」の思考には積み上げの思考がありません。常にマイナスのベクトルのみが働きがちです。無理にプラス思考に変えようと思ってもなかなかできませんが、自分の成果を良いものはよいと足し算で積み上げることができれば、一方的な評価にならずに済みます。要はバランスが重要なのだと思います。
足し算は掛け算のようにレバレッジを効かせるようには作用しません。しかし、常にプラスにしか、ベクトルは作用しないものです。能力開発セミナーのような話になってしまいますが、今日できたことを褒めましょう。自分で自分を褒めることも一種のトレーニングだと思います。意識して作用しなければ、その力はつきませんが、意識して継続しているといづれ習慣になって勝手に脳がそのような作用をし始めます。