第6章-うつ病を抱えながら働き続ける9つのヒント(3/9)

ヒント3 寛解を焦らず待つ

「うつ病」を患った人の治療に対する考え方のヒントです。
「未来に希望を持ったり、絶望したり、過去の喜びとして振り返ったり、後悔したりする感情は人間にしか備わっていない能力であると言われています。近年の脳科学の進歩によって、それに関係すると思われる脳の機能が次々と発見されているそうです。近い未来には、絶望感をもったり、後悔したりしたマイナスの感情を軽くする治療なども発達するかもしれません。
「うつ病」から社会復帰ができると早く服薬・通院などを止めたくなります。そのような治療を続けているのは、いつまでも病気のままであることですから、止めたいという気持ちになるのは当然であると思います。まして、社会復帰をした当初はいろいろな意味で、再スタートだという気持ちも多いですし、早く仕事に慣れたい、戦力になりたいと思ったりして、ついつい仕事の方に目が向きがちです。
しかし、「うつ病」は大変再発が多い病気です。再発の無い就労を続けていくということは、「うつ病」という病気を持病として受け止められるか、が大切なのだと思います。血圧が高い人が薬を飲み続けることは普通だと思うのに、抗うつ剤を飲むことに抵抗感を持つ必要はあるのでしょうか?「うつ病」の症状がよくなって普通の生活ができることを、通常、完治とは言わず、寛解といいます。寛解とは、病気による症状が好転または、ほぼ消失し、臨床的にコントロールされた状態を指します。すなわち、「うつ病」は完治をするのがなかなか難しい病気であることの裏返しなのだと思います。

このような「うつ病」という病気の性質を考えると、治療の継続は「再発防止」という観点から見極める必要があります。再発はすぐにやってくるとは限りません。実際に私の経験からすると、就労して3年経った時点で、治ったとの思いから仕事に打ち込み始めたときに再発の危機に陥りました。寛解というレベル(ドクターから服薬をしなくてもよい)になったとしても、やはり再発の危険性は普通の人より高いのです。まして、ドクターから服薬をしなくても良いと言われてもいないのに、勝手に治ったと思って服薬を中止することは非常に危険だと思います。
調子が良い時には、本当に治った気になります。それは仕方がないことだと思います。だれでも薬を飲み続けることには抵抗があります。それでも、治療の継続には十分注意をしましょう。仮に服薬は終了しても、定期的に精神療法(カウンセリングなど)を受けて、心のあり方の健康診断は受けることも考えてみるといいと思います。

寛解になった=治ったではないものの、調子を崩すことがなくなったことは「うつ病」の病気を患わっているものにとっては一つの目標であることは間違いありません。しかし、寛解=治ったとして、焦って(本人は焦っている意識はないのが多分普通でしょう)治療を中止したために、再発に対する対処が遅れひどくなる前に手が打てたのに、それが出来ず重い症状にもどってしまうことがあります。私は、寛解というレベルを実は分かっていません。ドクターにも治療の終了を言われたこともありませんし、カウンセラーからももう面談は必要ないと言われたこともありません。
ただ、寛解にならなくても就労はできます。それは持病を持っていても、みな普通に働き続きられるのと同じだと思います。寛解に早くなりたいという気持ちを持ち続けるより、「うつ」という病気を持病として捉えて上手に付き合っていく姿勢が必要なのだと思います。