4章-うつ病と付き合いながら、社会復帰するポイント(5/7)

「うつ病」オープンにしての社会復帰のデメリット

「うつ病」をオープンにしての社会復帰として、障がい者雇用枠での就労を考えてみました。あれほどメリットがありながら、一般的になっていないのはデメリットも多いからだと思います。
では、「うつ病」をオープンにして、障がい者雇用枠での就労にどのようなデメリットがあるかご説明していきたいと思います。

①スキル・キャリアが活かされるとは限らない

障がい者という前提で入社する場合、一般的に、非常に簡易な業務を採用側は用意しています。例えば、単純なデータの入力であったり、何かの仕分けだったりします。「うつ病」を発病するような人の多くは、非常にまじめに業務に取り組み、周囲からも期待されて仕事をしてきた経験をお持ちのことと思います。そのような人は一般的に高いスキルやキャリアをお持ちではないでしょうか。社会人になって数年の若者にとってはさほどギャップを感じないかもしれませんが、一定のスキルやキャリアのお持ちの人にとっては非常に退屈な作業であることが多いと思います。それは、今まで積み上げてきた社会人経験を踏みにじられた屈辱感を味わうような感情をもってしまっても致し方ないと思います。このような場合のギャップは容易に埋まるものではありません。採用の側からしてみれば、「うつ病」はやはり安定性を欠いた障害だと思われています。翌日同じパフォーマンスを発揮するどころか、出社さえ分からない(もちろん多くの場合は問題なく出社できるぐらいまで病状が回復しているのが前提です)ような人に、最初から重要な仕事を任せられません。そこで、仕事を任せてもらうようになるためには、たとえ簡易な業務であってもきちんと行い、安定して働けることを確認してもらう必要があります。この、ご自身の能力と企業から与えられる仕事のギャップをいかに克服するかは非常に難しい課題だと思います。


②年収が下がる

病前のキャリアにもよりますし、転職先との条件交渉の問題ではあるので決めつけはできませんが、一般的に年収は下がると考えたほうがいいでしょう。なぜなら「うつ病」の障がい者で入社するということは、求職者のスキルをある程度評価してはいるものの、すぐには成果がでないこともあることを織り込んでいるからです。採用の側から立ってみると、「うつ病」の人は非常に個人差が大きいため、雇用して一定期間働いてもらわなければ、どのような華々しいキャリアを持っていたとしても見極め期間を設定し、簡易な業務から始めようとすると思います。安定した就労を続けていればいずれ任される仕事も増え、年収も上がっていくとは思いますが、このタイムラグも克服が難しい課題です。


③自分自身を障がい者として受容できるか

例えば交通事故で下半身不随になって車椅子生活になった場合、障がい者であることを受容しない人はあまりいません。生活そのものも大きく変更を要しますし、なにより障がいが目に見えます。ですから、自分も周囲も大きな意味で共通理解が得られます。しかし、「うつ病」の場合、就労を検討できるぐらいまで回復してくると、一見健常者との見分けはつきません。ですから、どのようなハンデキャップがあるのかの共通理解も得られませんし、自分のプライドの問題もあり障がい者であることを受け入れられないことが多いと思います。
また、症状が改善してくるとドクターによっては障害者手帳を取得すべきではないという診断をするというケースもあると聞いたことがあります。これは、鶏が先か卵が先かの問題に似ていますが、自分を障がい者とも定義できない人には、障がい者雇用枠のメリットまで全く見えないでしょう。


以上のようなデメリットが主なものになります。個人の価値判断にもよりますが、私にとっては今までのスキル、キャリアが活かされるとは限らないということは本当に苦しみました。しかし、私はなぜ障がい者雇用枠で転職をしようとしたかについては、次にお話しをしたいと思います。