4章-うつ病と付き合いながら、社会復帰するポイント(4/7)

「うつ病」オープンにしての社会復帰のメリット

「うつ病」をクローズにしてのリスクを回避するためにはどうすればいいのでしょうか。「うつ病」をオープンにしてしまうということが、ひとつあります。面接の段階ではクローズにして、入社後にカミングアウトするなどです。この方法は不可能ではありませんが、かなり信用を落とすことになることは否めません。通常半年程度は試用期間であったりしますから、解雇になってしまうこともあり得ます。

では、「うつ病」をオープンにして、普通の社会復帰が可能かという問題ですが、これはかなり難しいことが実態ではないでしょうか。よほど経営者に近しい関係であるとか、よほど高度なスキルがありかつ再発の危険性が低いことを説明できないと難しいと思います。
こうした転職市場の背景を考えると、「うつ病」をオープンにする方策としては、障がい者雇用枠を検討することに一定の価値があるかと思います。障がい者雇用枠での「うつ病」をオープンにすることのメリットはどのようなものがあるのでしょうか。

①病気に配慮された働き方ができる

障がい者という前提で入社するわけですから、「うつ病」という病気に対する一定の配慮がもらえることが、期待できます。例えば入社後しばらくは短時間勤務をお願いすることができたり、仕事も比較的簡易な定型業務を中心とした働き方が提案されることもあると思います。なにより「うつ病」であることを上司だけではなく、同僚に対してもオープンになる訳ですから、調子が悪いときにはしっかりと休む必要があるということに理解を得られます。このことは、クローズでの課題であった、信頼感の喪失や職場内の孤立などを回避できることになると思います。


②治療の継続ができる

転職して働き始めた当初は、通院・服薬の継続などをすることが、再発防止には有効です。クローズでは何か悪いことをするかのように通院しなければならなかったことが、逆に通院が奨励されると思われます。ドクターからの注意事項なども職場にフィードバックすることも躊躇なくできますし、服薬に関する問題も基本的にクリアになることも期待できます。


③仕事の負荷を調整してもらえる(質・量)

転職の際にキャリアをアピールすると同時に、「うつ病」の症状についても説明することができます。何をすると体調的に厳しいか、どのような仕事は耐えられないかなどを説明して、仕事の内容を考慮してもらえるでしょう。私の場合、営業的なノルマは発病原因の一つであることから何としても避けたかったですし、長時間労働には耐えられる体力・集中力がないことから残業なしで対応できる仕事量に調整してもらうようにしました。社会復帰の早い段階は、まずは通常勤務ができることが目標として、ハードルを下げた形での合意ができるためプレッシャーは随分軽くなるはずです。

以上が主なメリットであると思われます。こうしたことを「うつ病」をクローズにしたことのリスクと比べてみると、ちょうど反対になりメリットとなっていることにお気づきいただけると思います。「うつ病」をクローズにして社会復帰をして働き続けることは、基本的にリスクに対して一人で解決して行かなければなりませんが、オープンにして障がい者であることを自分もまわりも受け入れられれば、周りのサポートが受けやすくなり、「うつ病」と仕事の両立という孤独な戦いになることは回避できます。
ではこのようなメリットがあるにもかかわらず、なぜ「うつ病」の社会復帰で障がい者雇用枠を検討する人が少ないのでしょうか。もちろん当初の私のように、障がい者雇用枠そのものを知らない人も多いとは思いますが、障がい者としての転職には大きなデメリットがあるからだと思います。
次にその話を進めたいと思います。