2章-精神障がい者としての就活(6/7)
第6話 ASサポート株式会社に出会う
書類審査を経ないで直接企業の方とお話しができる、合同面接会の予約をしていましたが、その開催日までの僅かな期間も、じっとはしてられなかったのでハローワークに通い続けました。
そこでASサポート株式会社という会社に出会いました。当然、大手情報サービス企業であるAS社は知っていましたし、ホームページで調べるとASグループのオフィス系業務(総務・経理等)の業務をアウトソーシングしている特例子会社であることが分かりました。特例子会社には良い印象を持っていましたので、早速応募することにしました。
この会社はなんと書類審査はいらないというのです。面接でアピールすることができるチャンスがやっとめぐってきたのです。
面接の当日は大変暑い猛暑日の日でした。もう1年近く着ていなかったスーツに袖を通し、汗を拭いながら会社へと向かいました。不思議とそれほどの緊張感はありませんでした。10数社すでに不採用になっていましたから、今回も駄目で元々という気持ちがあったからです。面接官は比較的年配の女性でした。しかし、凛々しさを醸し出す雰囲気から、これは厳しい突っ込みもあるぞと第一印象からそう思いました。まず、聞かれたのは志望理由です。これは、当たり障りのないようなAS社に対する印象や会社の公表されているミッションについてを話したような気がします。それから、これまでの経歴です。そこで聞かれたのは、自分の障がいをどのようにとらえているか、再発を防止するためにはどのようなことを考えているかなどを聞かれました。(※1)
次に聞かれたのが、この会社に入ってどのような仕事をしたいかでした。ここで、私が温めていたコンセプトを説明しました。私は事務職の経験はありませんが、改善活動を支援してきた経験は、どのような業務の改善活動にも通用すると思いますと・・・。すると「そうですか。今あるとすると重要機密書類の電子化なんかがテーマとしてはありますけど、どうですか」と尋ねられました。正直この問いには、窮してしまいました。ワークフロー系の仕事でしたら、比較的無駄などの発見などにはコンサルメソッドは使えますが、文書管理系は全く別の次元です。しかし、ここで怯んでは駄目だととっさに判断しました。「おそらく大丈夫です」と胸を張りました。転職活動を経験された方は分かると思いますが、面接の時には怯んだら負けです。前向きに目の前のことをTRYして解決していけるメッセージを発信しないと面接官の心には響きません。そうして一次面接が終わりました。
翌日、二次面接の案内が届きました。一週間後でした。その日は暑いながらも少し秋の気配が感じられるそんな日でした。
確かに緊張感はありましたが、自分のアピールしたことが評価されたことに多少満足をしていたので、妻にもこの会社が駄目でも、これを続けていけばいつか仕事は見つけられると思うと前向きなことを言っていました。妻は「そうね」と短く返事をして、微笑んでくれました。
二次面接には役員とみられる年配の方とマネジャー職のような方2人が出席されました。私は如何にこれまで走り続けてきたかを訴えました。
そして、役員と思われる方がこうおっしゃいました。「その仕事は誰がやっても大変難しいことだね・・・」
そのとき、本当にご理解頂けたと思いました。私がお伝えたかったのは、本当はこれだったのだと自分自身でも初めて理解できました。「表面的なスキルうんぬんではなく、如何に私が真剣に妥協なく自分を追い込んで難しい仕事にチャレンジしてきたか、それを狙えるだけのハートと行動力があるか」ということを・・・
採用になるかは分かりませんでしたが、本当に伝えたかったことがご理解頂けたことで感謝の気持ちで家路につきました。
アビスタポイント
※1:ここで、採用担当の方が聞いているのは、精神障がいの方が就労をする際には確認されうる質問といってもいいでしょう。ご自身の障がいについて、どのように受け止めているか、再発を防止するために、どんな工夫や対処をしているか、的確に相手に伝えましょう。もし、障がい者雇用枠での就労を考えているのであれば、生活面ではきちんと安定し、悪化した時の対処法を持っていることは大変重要です。ほかにも、アビリティスタッフィングでは企業との面接の前に、登録いただいた方の病状や必要なケアなどを伺ったうえで、障がい特性に合わせたお仕事を紹介するようにしています。