2章-精神障がい者としての就活(5/7)
第5話 精神障がい者として障がい者枠の求人に応募する
障がい者として、障がい者雇用枠で応募することを決意した私がまず行ったことは、履歴書、職務経歴書の棚卸しをすることでした。つまり、私の経歴で、どんなところが強みとして強調できるか、検討したのです。
事務職経験という点に関しては、20代のころに生産管理(生産計画立案)という事務仕事をしていた経歴はありますが、この経歴はかなり特殊です。一般的にメーカーの生産管理(生産計画立案)というのは、ほぼプロパーの人で占められています。なぜなら、生産計画立案というのは各メーカーそれぞれ特殊な生産思想に基づいて仕事をしていますし、生産計画は多くの関係者(営業・購買・工場管理・開発・物流など)の社内人脈に立脚してこそ、始めて仕事が成り立ちます。ですから、比較的出世がしやすい部署であると同時に、市場性の低い仕事です。当然、生産計画する国家・民間資格などありませんし、他の会社に移って即戦力になるような持ち運びできるスキルなどは何もありません。ですから、事務職としてのキャリアはほぼ無いに等しいのです。
いくら経歴不問といっても、そこは転職市場です。30代後半求職者のキャリアを問わないはずはありえません。ですから、私が如何にいろいろな経験を積んできたか、経歴こそはないがポテンシャルは高いように相手に伝えられるかを研究しました。そこで、考えたのが「コンサルタントとしてクライアントの業務改革を支援してきた経験が、事務仕事での業務改善に活かせる」というコンセプトです。
棚卸しをした履歴書と職務経歴書を求人企業に送付して、書類審査を受けることになりました。ところが、1件も書類審査を通らないのです。面接をしてもらえれば、経歴をアピールすることもできますし、自分の転職戦略の可能性も検証することができます。しかし、返ってくるのはいつも書類審査で不可になった案内ばかりでした。
10数社そのような状況が続きました。これはいくらなんでも経歴がないことや年齢が高いことだけではないのではと思うようになりました。やはり、精神障がいという障がい自身が障がい者雇用という枠の中ですら、門戸が開かれていなかったのです。これには、正直かなり参りました。私の中では、いろいろなもの(健常者としての立場、これまでのキャリア、プライド、年収へのこだわり等)を捨てて、臨んでいるのです。しかし、この戦略もうまくいかないということになるとこれは八方塞がりです。
最近になってわかったことですが、障がい者を雇用したい企業は大変多くあり、身体障がい・内部障がいの方はかなりの売り手市場だそうです。身体障がいの方は、例えば自家用車通勤ができるように駐車スペースを確保したり、車椅子トイレを設置したりとその障がいに合わせた対策は立てやすいです。しかし、精神障がいは目に見えない上、何をどうしたら雇用できるので分からないのです。つまり雇用する企業の側にノウハウがない、また、精神障がいの特に「うつ病」に関しては、現在の従業員の中にもいて、その復職に苦労しているところが多いので、新規の採用になるとどうしても二の足を踏みます。 大変残念なことですが、これが現実です。
そこでこれは合同面接会のような書類審査を経ないで直接企業の方とお話しができる機会に賭けるしか無いように思えてきました。ハローワーク主催の障がい者合同面接会に登録をしました。ただ、これは不定期に行われますし、その時は直近1ヶ月で1回しかありませんでした。