3章-うつ病と付き合いながら、働き続ける意味(1/6)

アビリティスタッフィング

第1話 短時間勤務からスタート

2007年秋。ASサポート株式会社に入社しました。

私が配属されたのは、機密文書などを管理するグループでした。この部署の仕事は、ASグループ各社の機密文書を預かり、申請に従い適切に管理し、必要に応じて検索 して各部署にフィードバックするような仕事でした。グループのメンバーを見渡すと障がい者とは思えない人たちばかりでした。大変活気のある部署で、人間関係も暖かで、とかくギスギスしたところでキャリアを積んできた私にとって大変新鮮な場所でした。
この部署での課長が面接でできないことを質問して頂いた方でした。「まずは焦らず慣れることから始めましょう」と言って頂きました。これまでの転職はどれだけ早い時期に成果をだすかと肩肘をはって乗り込んだのに比べて、ゆっくりスタートすることができました。
まずは短時間勤務が提案されました。最初の1週間は昼まで。次は3時まで、次は4時までと徐々に勤務時間を延ばしていくやり方です。この配慮も「うつ病」をオープンにしたからこそ頂ける配慮でした。通常、「うつ病」から会社に復帰する際に、ならし勤務から徐々に時間を延ばしていくことが、有効であるといわれています。(※1)しかし、転職ではなかなかこのような配慮はいただけないのが普通です。それは、当たり前のことですが、この段階は既に治療ではなく就労ですので、就業規則にのっとり勤務することが求められます。

もともと、転職は普通の人でも大変ストレスがかかる作業です。一般的にそれを評価した調査に社会的再適応評価尺度(Holmes&Rache,1967)というのがあります。これは、人が一生のライフイベントのなかで、適応するのにどれだけのストレスがかかるかというものを評価したものです。配偶者の死別を100とした場合、親族の死や離婚などのストレスが評価されています。この評価によると、転職は36です。これは、親友の死の37とほぼ同じですし、150~200万円の借金の31より高いストレスです。まして「うつ病」から復帰した段階では、決してストレス耐性は高くありません。ですからとにかく疲れた体と心を休める余裕があるこの短時間勤務は大変ありがたかったです。
それと毎週実施された人事面談です。これは、人事担当者と精神状態・身体的体調・仕事内容(質・量)・睡眠の質など色々な相談をすることができました。毎週30分程度色々な事を確認していただき、配慮をして頂きました。直属の上司にはなかなか話しにくいことも、人事ラインだと相談できるということもあると思います。また、定期的にある程度時間をとって話し合うことで、自分の今置かれている状況を客観的に見つめる機会にもなり、大変有意義な時間でした。
また、職場に配属になった時についてくれた先輩も大変面倒見の良い人で、その方も一時期病気の関係で「うつ病」状態になったことがあるらしく、大変親身に話をして頂きました。

いままでの転職では、スタートダッシュが肝心でしたが、自分でも慎重すぎるかなと思えるほど、ゆっくりスタートできたのです。とはいうものの、「うつ病」は波があります。そのようにいろいろな配慮をしてもらっても大変出社がつらい時期もありました。

アビスタポイント

※1:一方、中には勤務時間の変化が生活の変化となり、逆に体調を壊してしまう方もいらっしゃいます。アビリティスタッフィングでは、おひとりおひとりに合った形で、就労を開始していただいております。