3章-うつ病と付き合いながら、働き続ける意味(5/6)

第5話 再発の危機

2010年春、これまでの電子化業務の業績が評価され、主任に抜擢されました。この仕事は、現場の班長のような仕事といえばなんとなくイメージして頂けるかと思います。主な、役割は日頃のメンバーの仕事のコントロールや品質の管理、営業を担当(※1)する部長・課長のサポート、新規業務の実務担当者としての設計・運用コントロールというものです。
この仕事についたときには、「やっとここまでうつ病から克服できた。これでやっと一人前に働ける。失ったものを取り返すことができる」という思いで一杯でした。それまで、残業は全くしなかったのですが、これを機に残業を解禁にしました。

私が担当していた業務は読者はがきなどの個人情報を管理するチームでした。2~3人の若手を部下にして、仕事を進めている感覚は、コンサルティングのプロジェクトチームをプロジェクト部長で引っ張っていたあの頃の感覚です。まだまだ、小さな範囲の仕事しか任せられてはいませんでしたが、これから実績を積んでいけば、いずれ課長になり、部長になりと出世もできると思っていました。
ゴールデンウィークを過ぎるころから、仕事の忙しさが増えてきました。ちょうどそれまで手掛けてきた電子化業務と個人情報の管理とを組み合わせた仕事の引き合いが増えてきていました。これには手ごたえを感じていました。それまで培った経験が活かせると思ったのです。このような引き合いがあるたびに、部長・課長(※2)と営業に同行し、新規業務を設計しては顧客に提案して実際の実務運用まで持っていく、そんな仕事でした。

暑い夏がやってくる頃、春より始まった新規業務が想定していた工数では収まらなくなり、顧客交渉をして業務委託料の見直しを提案している傍ら、また別の新規業務の設計・運用のフェーズに入っていきました。また、読者はがきの管理を新規業務として関係会社へ営業活動も続けていたりしました。一方、既存業務の品質管理や改善活動のフォローなども当然行わなければなりません。
職場にいると、あちらこちらから、名前を呼ばれるようになりました。嬉々として仕事をしていました。その内だんだん帰宅時間が遅くなっていきました。

そして、だんだん眠れなくなってきました。床についても頭はギンギンに冴えていて、「あの仕事を明日はしなければ。あの業務は今どうなっているだろう。あのお客さんにこう提案したらうまくいくのでは・・・・」
眠れなくなるとだんだん疲れが蓄積していきます。顔色も悪く、食欲もなく、このままではまずいという焦りが募ってくるようになっていきました。部長・課長は心配をしてくれました。しかし、やっとできるようになった仕事を手放すことは、これまでの道のりが無になると思うと怖くて、ただただ大丈夫ですと言い続けていました。

そのようなコンディションでは、良い仕事ができるはずがありません。そのうちミスが頻発するようになってきました。そうです。あれほど恐れていた「再発」が目の前に口をあけて迫ってきたのです。
「逃げだしたい!でも、今逃げたらダメになってしまうのではないか」室長が一つの決断をしてくれました。「うつ病」にそんなに仕事をさせるのは、足を骨折している奴に重たい荷物を背負わせるのと同じだぞ!

そして、その話を部長から聞いたとき、「もうできません。仕事を減らしてください」とお願いをしました。今から思えば、この時立ち止まっていなければ、あの悪夢の日々に逆戻りしていたと思います。

アビスタポイント

※1:ASサポート株式会社では、総務・経理などの業務をASグループの関連会社から受託して行っています。グループの特例子会社だからといって必ず委託されるわけではないため、営業目標をもってグループ会社に営業活動を行っています。
【組織での役割】主任<課長<部長というように仕事の範囲とマネジメントの割合が上がっていく。