2章-精神障がい者としての就活(2/7)

第2話 デイケアの就労プログラムで障がい者雇用枠を知る

就活を開始した時、ちょうどタイミングよく、日頃通っているデイケアで就労支援プログラムというものが始まりました。これは、デイケアに通う人で就労を考えている人が10名程度集まり、臨床心理士、精神保健福祉士、作業療法士などのスタッフとともに一緒に就労を考えていきましょうというプログラムで毎年行われているものでした。
デイケアに通う人といっても、その抱えている病気は様々でうつ病・統合失調症・パニック障害・適応障害・躁うつ病・摂食障害など様々でしたし、一度も就労したことのない若者・主婦・高齢者とさまざまな人がいます。当然、このようなプログラムも色々な人が参加していますので、どこまで自分の役に立つ情報や考え方が得られるか疑問はありました。しかし、就活の開始当初から行き詰まりを感じていたので、自分ひとりで考えるより色々な人の話を聞いてみるのもいいかなと思い参加することにしました。
このプログラムは自己紹介の仕方や履歴書の書き方など一般的な就職準備の内容が主でしたが、「障害者雇用促進法を知ろう」というテーマが入っていました。その時までは恥ずかしながら、障害者雇用促進法(※1)の存在自体も知りませんでした。ここでは、障害者雇用促進法の詳しい説明は割愛しますが、要するに一定規模の事業者に対して、障がい者を雇用する義務を負わせるというものです。2006年に法改正が行われて、それまでは身体および知的の障がい者のみが雇用率算定の対象となっていたものが、精神障がい者も算定されるようになりました。

デイケアスタッフはこの法改正を追い風と考えていました。これまでは精神障害という心の病を持つということは、社会的にかなり差別的な見方をされてきました。私自身もそうでしたが、精神病というとなにやら「あぶない」「イカれている」ような人という根拠が全くない偏見があります。それもあって、これまで精神障がい者であるということ公表するメリットはありませんでした。しかし、デイケアスタッフは、今回の法改正の背景には精神障害という障害に対する世論的な関心が向上したことがあり、今後は精神障がい者が障害をオープンにして就労する機会が増えるだろうとの予測をしていたのです。
私自身はかなり戸惑いました。確かに大病をして、現在療養中ではありますが、自分自身は自分の持っている障がい者のイメージと離れていましたし、障がい者も就労して社会を支えているという当たり前のことが周囲に今までいなかったので、障がい者として働くということを全く意識していませんでした。
ただし、自分の経歴の延長線上の営業やコンサルタントというような仕事には限界感を感じていたので、職種変換をする必要があると考え始めていました。そこで、障がい者という形なら、スタッフ業務(人事・総務など)の経歴がなくても、転職できるのではないかと考えたのです。
デイケアスタッフに相談したところ、実際に障がい者雇用枠で就職できた実績は今のところないが、ここのところそのような問い合わせもあり、あるサービス業のグループ企業では、デイケアへの見学なども話がきているとのことでした。
また、私は障がい者に認定されるのかということも重要なポイントでした。デイケアスタッフの話では2級以上の認定は難しいが3級なら認定されるケースも多いとの話でした。

早速、インターネットで調べたところ3級の認定基準として以下の定義が載っていました。
・精神障害の状態が、日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のものである。お住まいの市区町村の担当窓口でご確認いただけます。
この基準をどのように解釈するかによりますが、「何らかの配慮を得なければ社会生活(社会人としての就労)ができない状況」と考えれば、私も対象になるのではと考えたのです。私はこの方向性も研究してみることにしました。

アビスタポイント

※1:障害者の雇用の促進等に関する法律. 企業に対して、雇用する労働者の2.0%に相当する障害者を雇用することを義務付けています(障害者雇用率制度)。 また、障害者本人に対しては、職業訓練や職業紹介、職場適応援助者等の職業リハビリテーションを実施し、それぞれの障害特性に応じた支援がされるよう配慮しています。