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専門家インタビュー

精神障がい者の就労の意義を見つめなおす 伊藤順一郎博士 医師、(精神医学を専門とする)医学博士。独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 社会復帰研究部部長。特定非営利活動法人 地域精神保健福祉機構(コンボ)共同代表理事。

「就労支援が支える精神障がい者の新しい働き方」2

どのような就職実績があるのでしょうか?

欧米での多くの研究によれば、地域社会で暮らしている精神障がいを持つ方で「仕事をしたい」という気持ちの強い方であれば、IPSの手法を用いることによって約5割強以上の人々が、何らかの形で1年以内に一般企業に職を得ているという結果を出しています。私たちの研究でも、IPSの支援を受けた人々は6か月間で44%の方が何らかの形で一般企業における就労体験を持てたという成果が上がっています。
この場合の「就労体験」とは、週に5時間以上、企業の中で何らかの仕事につくということで、パート・アルバイト・内職・障がい者雇用・短期間派遣就労・病名をふせたままクローズで一般企業へ就職するなど様々な就労形態のことを指しています。
最近の研究では、IPSの支援を受けているうちに、最初は3日も仕事を続けられなかった人が、週20時間以上の仕事を年単位で続けられるようになったというような報告もあります。

就労をすることが治療にとってマイナスの効果が働くことはないのでしょうか?

これまでよくいわれていたのは、就職するとストレスがかかるので症状が悪くなるのではないか、再入院率が増えるのではないか、ということでした。しかし、IPSには、このようなマイナスの傾向があるという調査結果はありません。これは就労支援や生活支援のスタッフが本人に寄り添っていて、医療とも適宜相談できる体制にあることが大きいと思います。また、本人が、「自分が望んでいることのために頑張っている」という自覚が出てきて、自分でもいろいろ健康管理面でも工夫してきたということもあるかと思います。

画像:専門家インタビュー2

一方で、「就労支援のサービスを受けて良かったか?」という質問には、「良かった」という答えが多く、やって良かったという意見は多数を占めています。幻聴は聴こえたりするけれど、日々の暮らしが充実していて、毎日外へ出かけて行ける。医師からも「なんだか元気になっている」という声もありました。日々の満足度が高まり、生活にハリが出たといったことでしょうか。

症状が残っていてもそれへの対処能力が向上することや、症状がありながらもちょっとした考え方のコツや工夫など、生活の能力が高まった結果、就労を継続することができているといえます。

就労は本人の生活を取り戻す、人生を取り戻す重要な課題です。精神疾患は多くが慢性の疾患ですが、病気や障害を持っていても、すべての生活が病気に覆われるということではありません。症状がいつもいつも出ていて生活を悩ませる、ということでもないのです。 病気の治療をもこつこつと続けながら、しかもその人の長所や能力を生かしながら、ふつうの市民生活を実現し、それを楽しむことを目指すのがこれからの精神医療のあり方だと思います。仕事を通じて社会と触れることは、このような精神医療の大切に考えるところです。そして、それは企業にとっても、得難い人材を得ることになる。IPSによる支援は、そのようなあり方への具体的な処方箋なのです。